6月11日から13日まで、蓼科高原の蓼科東急ホテルにおいて、日本、ヨーロッパを中心に約30名の参加のもとに、27名の招待講演者を集めて「Japan-Italy joint workshop - Workshop on physics and electronics of 2D doped materials」を実施しました。本国際ワークショップは、岡山大学とイタリアのナポリ大学の交流協定に基づいて、2019年以来開催されているもので、今回は3回目になります(2019年はナポリ大、2021年はオンライン開催)。また、学術変革領域研究(A)「超秩序構造科学」もワークショップのサポートならびに組織化に大きく貢献しました。
 今回は、2次元物質を基礎にした最先端の研究成果が報告されました。とくに、最近のトピックスである「結晶の空間反転対称性の欠如した場合」における「時間反転対称性の破れの有無」と密接に相関する「非相反伝導やBPVE効果」、マジックアングルグラフェンの超伝導、トポロジカルカゴメ金属の最近の研究、有機物質でのCISS効果やトポロジカル物性、有機物質を使った最先端のトランジスタ研究、FeSe極薄薄膜超伝導に関する研究や、FeSe1-xSx系でのネマティック相と超伝導のカップリングと新規超伝導相の出現、CVDを使った高性能なグラフェンの作製、多様な2次元層状物質の薄膜形成や酸化物界面薄膜での2次元電子ガスの磁気特性、新規な2次元層状物質の磁性研究などの多くの興味深い発表がありました。
 また、本ワークショップでは、「超秩序構造科学」の主要な研究手法である蛍光X線ホログラフィーやX線光電子回折などを使ったグラファイト超伝導物質や強磁性体の構造研究に関する興味深い報告も行われました。蛍光X線ホログラフィーによる二元金属ドープグラファイト系が、従来考えられていたのとは異なり、「KC8結晶内にCaC6クラスターが存在するという報告」は出席者の注目を集め、その後のコーヒーブレイクや懇親会でも議論の俎上に上がりました。
 ワークショップでは、若手研究者の先端的な研究が多数報告されており、とくに「結晶の空間反転対称性」や「時間反転対称性」と密接に絡んだ物理が、固体物理学研究の中心的なトピックスになっていることが改めて確認でき、学術変革領域研究(A)「超秩序構造科学」の創出した概念である「超秩序構造」が固体物理において「重要な鍵」になることが認識できました。

                 岡山大異分野基礎科学研究所 久保園芳博

国際ワークショップ参加者の集合写真
懇親会の様子